【犬のしつけの話】「叱り」の副作用

叱ることの副作用

愛犬のしつけをキチンとしないと!

と真面目に思っている飼い主さんほど陥りがちなワナについて今回はお話しします。

「しつけ」というと
「良い行動」は、褒めて
「悪い行動」は、叱る
というイメージを持つ方が多いのではないかなと思います。

ここでの
「良い」行動とは、飼い主にとって「都合の良い」行動で、
「悪い」行動とは、飼い主にとって「都合の悪い」行動
という意味です。

※ 「褒める」「叱る」は、飼い主側の主観という意味で使っています。

人にとって都合の悪い行動を犬がする場合、
犬を「叱る」ということを自動的に行うことが多いのが現状ではないでしょうか。

逆に犬が人にとって都合の良い行動をしているときは
褒めることなどせず、スルーしてしまうということが多いのではないでしょうか。

「叱り」について話を戻します。

叱ればその行動はやめて、正しい行動が起こるだろうと思う飼い主の期待とは裏腹に
叱ることには、さまざまな「副作用」があります。

※ 人の思い通りになることばかりではなくデメリットがあるという意味で
「副作用」という言葉を使っています。

では、どのような副作用があるのでしょうか。
代表的な副作用を3つ挙げます。

① その行動が増える
② 飼い主の目が届かないところでその行動をするようになる
③ 犬が飼い主に対する不信感を持つようになる

これらは、叱ることによる副作用と言われていますが、
実際には、このようなことが起きることに全く不思議はありません。

ではなぜ、そのような副作用が起きるのかについて、
ひとつずつ見ていきましょう!

目次

① その行動が増える

例えば、飼い主が忙しくしていて犬が暇にしているときなどに
犬がして欲しくない行動を始めると
飼い主は「こら!」とか「だめよー」などと声をかけたり、犬に近づいたりするとします。

こういう状況になってしまうことってよくありますよね。

飼い主側はほとんど反射的に反応していることと思います。
犬側はその行動をすると飼い主が自分に注意を向けてくれるという経験をするわけです。

飼い主の反応で、犬はその行動をすぐに止めることもありますし
そのまま追いかけっこなどに発展するようなこともあります。

そしてまた暇になったら同じことを繰り返すのです。

「こら!」や「だめよ」で、犬がその行動をやめる場合、
それが叱りとして効いてるんだな!と思ってしまうかもしれませんが、本当にそうでしょうか。
もしそれが本当に有効ならば、やって欲しくない行動が現れる頻度が減るはずなのです。

叱っているのにやって欲しくない行動を繰り返す場合は
飼い主の叱りは、犬にとってメリットとなっているのかもしれません。
こういう場合は、叱ることで行動が減らないどころか逆に増えてしまうことがあります。

それならもっと強く犬が嫌がるほど叱ればいいんだ!と思った方もいるとは思いますが、
そんな方は引き続きこの記事を読んでみてください。

② 飼い主の目が届かないところでその行動をする

飼い主の叱りが犬にとって嫌な刺激の場合は
叱る人が見ていないときや留守番中にその行動をするようになることもあります。

例えば、犬が部屋の床でおしっこをした時に飼い主がひどく叱ったとします。
犬がそれを嫌なイメージで受け取った場合

叱る人から見えない場所でおしっこをすれば、犬にとっては嫌なことを
避けられるという意味で都合が良いですよね。

犬はどこでおしっこをしたらいいかなんてわからないまま
飼い主のいるところでおしっこをしたら飼い主から嫌な目に遭わされた!という状態です。
身を守ることは動物にとって優先事項ですので回避する方法をすぐに覚えます。

叱りを回避するには、飼い主が見てないところですれば良い!ということになるわけです。

叱れば、犬が飼い主に忖度してトイレシートでできるようになるなんてことはありません。
してほしい行動に繋げるには飼い主側のサポートが必須です。

③ 犬が飼い主に対する不信感を持つようになる

②のような方法を採用している場合に良く起きるのが
ずいぶん後になって失敗しているおしっこに気づいた飼い主が
「こんなところでおしっこしたらダメでしょ!」という意味で
犬を叱ると言ったことです。

犬にしてみたら間違った場所におしっこをしたことを叱られてるなんて分かりません。
飼い主は突然嫌なことをする人というようなイメージになるのではないでしょうか。

人なら後から言っても分かりますが、犬はそこにおしっこしたらダメだったんだ!
なんて都合よく思ってくれることはありません。

犬は突然ブチギレる飼い主にビクビクしたり、自衛から攻撃的になることもあります。

叱ることをメインに採用したしつけをすることで犬との関係が悪い状態になることは
珍しくありません。

叱りの問題ばかりではありませんが飼い主が無意識にやっていることが、
犬の情緒や行動に思ってもみなかった悪影響を与え
飼い主にとって好ましくない振る舞いにつながることもあります。

最後に

今回は「叱り」についてフォーカスしてみました。

叱りの副作用はまだあり、例えば、叱りに犬が少しずつなれるということもあります。
そうすると飼い主側の繰り出す叱りの強度が徐々に強くなることや
犬に対する暴力に発展することも珍しくありません。

ここまで読んでいただくと、「叱り」を犬のしつけに使うことが
生産的でないどころかマイナス要素が強く働くことを
お分かりいただけたんじゃないかなとおもいます。

叱りを使う方法を採用しているということは、
犬に悪い行動をさせる必要があるということです。

実はよくやる行動は馴染みの行動となり、ますますその行動への
フットワークが軽くなるという側面もあるのです。

「しつけ」と考える場合
飼い主にとって都合の悪い行動をなくすことにフォーカスしたくなりますが
犬がその行動をする必要がなくなるよう環境を整えることや
やってもらいたい行動を犬が選んでくれやすくなるよう練習することが大切です。

すでに愛犬との関係が悪くなってしまっているような場合では
愛犬との向き合い方を改めると少しずつ関係が良くなっていきますし
しつけ(トレーニング)もお互いがより楽しめるようになります。

その場合、ゼロからのスタートではなくマイナススタートとなりますので
どうしても時間はかかると思います。

方法がわからない場合は、
愛犬のためにもぜひ犬の行動のプロに中に入ってもらってください、
その犬に適したトレーニングの道筋が整理され、
トレーニングがより早く進むことでしょう。

犬を迎えた時から犬と向き合うには
犬を嫌な目に遭わせるような方法をしつけに採用しないことをお勧めいたします。

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この記事を書いた人

CCPDT認定ドッグトレーナー
動物取扱責任者
福岡県動物愛護推進委員
人道的なドッグトレーニングの普及
訪問&オンラインで個別レッスン実施中

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