ご愛犬を触る時や抱き上げる時に
- 出来るだけ嫌な思いさせないように!
- 出来るだけ安心してもらえるように!
と、考えて接していますか?
そんなこと考えなくても飼い主のやることなら犬は嫌とか思わないんじゃないの?
なんて疑問も湧いてくる来るかもしれませんが、飼い主のやることでも愛犬が不快感を持つことはあります。それが咬傷事故などの問題に発展することが少なくないのです。
初めは普通に抱けてたのに、嫌がりだしたと思ったら、最近は噛み付いてくるんです・・・
愛犬が噛むようになると飼い主さんはトレーニングの必要性を感じ、私のようなドッグトレーナーに相談されるのですが、トレーニングの前にまずチェックしておかないといけないことがあります。
それは、身体面に問題はないのかということ。触られることで痛みや違和感がある場合も、不快を示すような行動となることがあります。
トレーニングの前に、まずは動物病院で診察を受けていただき、健康だとわかって、改めてトレーナーは関わることになります。
トレーニングの進め方は、レッスンを始める前に経緯を詳しく伺いトレーニングの方向を決めます。
その後、トレーニングレッスンでサポートさせていただくこととなります。
今回は、そんな回り道をしてしまう飼い主さんとわんこさんをおひと組でも減らすべく、行動問題予防にもなり、飼い主と愛犬お互いがより信頼し合えるようにもなる、普段からできる「触る時や抱く時に気をつける3つのこと」についてお話しします。
すでに問題がある場合は、必ずに家庭犬専門のドッグトレーナーにご相談ください。
嫌でも我慢するよう教えれば良いのではないのか?
先ほどのお話のように例え飼い主であっても、触られることや抱き上げられることに不快や苦痛を感じる場合があります。
これは、けしからんことでも、犬が飼い主を舐めてるというようなことでもなく、ただ、不快に感じている、苦痛に感じている、それだけのことです。
感じ方はそれぞれ、その時々で、同じように接しても嬉しく感じる場合もあればイヤだと感じる場合もあります。
不快に感じる場合、犬はボディーランゲージでイヤだということを伝えてくれますが、そのサインが出ても嫌がることを問題視して、犬に我慢をさせる方向に舵を取る方もいます。(こういうのをしつけだと勘違いしている人も少なからずいます。)
犬に我慢をさせて、抱き上げや触らせる“形”ができたとしても犬はどんな気持ちでしょうか。
嫌だからイヤだ!って伝えてるのに、それを我慢とか無理だよ!
結果もあまり好ましいものになることは少なく、そればかりか、余計に事態が悪化することも珍しくありません。
- 抱くとおもらしをするようになった
- 抱こうとすると本気で噛みつくようになった
- 抱いているときに暴れて落ちて両前脚を骨折した ほか
犬の気持ちを考えればこんなことが起こるのも解らなくないと思います。「犬が噛み付く」というようなとき、多くの場合、それまでの経験や学習の結果でそうなっていることが多いのです。
犬が楽しめるようなワクワクが伴うような我慢ならまだしも、不快や苦痛に蓋をするような我慢をさせる方法は選択しないことを強くお勧めします。
では、触られることや抱き上げられることに我慢ではなく、
平気、好き、リラックス、気持ちいい、安心・・・
というようなポジティブな気持ちを持ってもらうにはどうしたらいいのでしょう。
一つ一つ見ていきたいと思います。
ポイント1 事前に声をかける
抱っこする“前”に「〇〇ちゃん、抱っこするよ」
触る“前”に「〇〇ちゃん、触るよ」
こういった声かけを“まず”行います。
犬は人間の言葉なんかわからないんじゃないの?
と疑問を持つ方もいると思いますが、犬はパターンを覚えるのは得意です。毎回繰り返すことで、徐々に言葉の意味をわかってくれるようになります。
私たちは今から何が起きるのかがわかっていても犬はわかりません。それなのに急に抱き上げられたり触られたりするとびっくりしたり不安になったりすることもあるでしょう。
ポイント2 犬の「いいよ!」を待つ
声かけをしたからといって、すぐに抱いたり触ったりしていいわけではありません。
伝えたことで犬は抱っこされることがわかったんですよね?
それで十分じゃないですか?
十分ではないんです。伝えたあとは、
それをしていいかどうかを犬に訊ねるということをします。
するorしないの選択を犬に委ねます。
犬に決めてもらうってことですか?
そうです!犬が決めます。
そんなバカな!と思った方もいるんじゃないでしょうか。犬は飼い主のやることはなんでも受け入れるものだ!という考え方をする方々には受け入れがたい考え方かもしれませんね。
でも実際これをやるかやらないかで犬の飼い主さんに対する安心度合いや信頼度合いが変わってきます。
人同士の“良好な”コミュニケーションで「〇〇したいと思ってるんだけど、いいかな?」って聞きますよね?それと同じことだと思ってもらえば良いかと思います。
犬にそんなの必要かなあ?と懐疑的な方も実際やってみると、犬側の意見もわかって案外、「ほー!」となると思いますので、ぜひ試しください。試すのはタダですし、やってみて損はないと思いますよ!
犬の「いいよ!」の見極め方
では、どうやって犬の「いいよ!」を見極めるのでしょうか。
方法は、犬に手をのばして近づける( → 少し触る)、犬の身体を支えるように抱く( → 少し持ち上げる)といった触ったり抱き上げたりする導入部分やってみて、犬が身体で示してくれるサインを観察します。
- 緩んだ筋肉や表情
- 手に体を押し付けてくる
- 前足をかけてくる
- 体重を預けるように抱かれる など
「いいよ!」と言ってくれたらとりあえずオッケーですが、触り方や抱き方、時間が長くなることで「やめて!」となる場合もあります。その場合はすぐに中断してそれ以上無理はしないようにします。
- 筋肉や表情が硬くなる
- 前足で手を遠ざけようとする
- 身体や顔を背ける
- バタバタ動く など
こういう場合は、時間をあけて再度トライです。いつもこうなってしまう場合は、別のアプローチが必要です。早めに家庭犬専門のドッグトレーナーにご相談ください。
ポイント3 自らの手に注意を払う
犬に触れる手には優しさが必要です。といっても人によって優しさの基準は違うと思います。これは当たり前の話で感じ方もそれぞれ。もちろん犬だって感じ方はそれぞれ違います!
とても優しく触れても不快を示す犬もいるし逆に無造作に触っても喜ぶ犬もいます。
こういう時、人は犬のことを良いとか悪いとかとジャッジしたくなるものですがジャッジは不要です。必要なのは、対面してる子にとって安心できる優しい触り方です。
気をつけたいのは自分なりの優しい触り方に集中しすぎて、犬の反応を見てない!なんてことになること。大事なのは、犬の反応(ポイント2のサイン)です。
優しい触れ方
まずどこを触るかです。犬によりますが頬や顎から前胸のあたりがまず触られる場所として受け入れてくれる犬は多いようです。その後肩や背に手を移動するといきなり背後から触られるわけではないので安心してくれやすいと思います。
手の平と手の甲の触られるときの感じ方の違いについてです。手の平は掴まれるようなイメージですが、手の甲はつかめませんよね。なので手の甲で触られた方が安心してくれやすいようです。
犬に触れるときは、(場合にもよりますが)手の甲を近づけてゆっくり触って大丈夫そうなら手を返して手の平で触るとすると安心してくれやすくなります。
触られる瞬間は敏感になりやすいですが、手を離す瞬間も同じです。触る時は注意するけれど、手を離す時はそんなに注意することは少ないのではないのでしょうか。
今までそこにあった手が急になくなることでドキッとさせてしまうこともあるかもしれません。
触れる瞬間も手を離す瞬間も丁寧に行いましょう。びっくりさせないように静かに。ただ集中するあまりご自分の息を止めたり、動きが硬くなってしまうと犬を緊張させてしまうことにもなるのでそこにも注意してくださいね。
犬を安心させるための2つのこと
先ほど息を止めないお話をしましたが、「息をしないと!」と意識することでそれが変な緊張に繋がり犬を緊張させてしまうこともあるので、簡単に解決する2つの方法をお伝えします。
1つ目は、おしゃべり!
黙っている時とは違い、おしゃべりをしていると自然な息をしやすくなります。加えて、おしゃべりの速さや声のピッチに気をつけると良いでしょう。
(私が思う)イメージは、「あなたはだんだん眠くなる〜」という催眠術師的な声の出し方です。少し低めの声で静かにゆっくりといった感じです。
これも犬の様子次第ではあるのですが、黙って集中することで息を止めてしまうのを予防するのと同時に、犬に話しかけることで身体や手の余分な力が抜け、安心を伝えやすくなります。
しゃべるって何をしゃべるの?と思った方もいると思いますが。「毎日可愛いねえ」とか「抱っこさせてくれてありがとうね」とかなんでも良いと思います。
2つ目は、広い視野で観る!
どういうことかというと、いろいろ気をつけて犬に接しているとついつい自分の手や触るところをだけをじーっと見てしまうことがあるかもしれません。
これは、犬の様子を全体的に観察できないということにつながります。
そんなことにならないためにも、大きな視野で観ることを意識します。そうすると、守備範囲が広がるだけでなく、犬から見てもあなたの目が柔らかく見え、犬へ安心を伝えやすくなります。
どちらも練習が必要かもしれませんが、まずは意識することから始めてください!
一番大切なこと
今回、多くの犬が嫌な思いをしにくく、安心してくれやすく、良い結果に繋がりやすい方法を紹介しました。ですが、こうしたら絶対に触らせてくれるようになり、抱っこさせてくれるようになりますよ!ということではありません。
犬によっては今回紹介した方法が合わなかたっり、刺激が強すぎたりすることもあります。
犬の緊張が強い場合や強めの反応が出る場合は、今回ご紹介した方法の範疇ではありません。問題が悪化しないようできるだけ早めに家庭犬専門のドッグトレーナーにご相談ください。
“唸る”“噛む”だけでなく“固まる”“逃げる”もストレスを強く感じていると見てください。
まとめ
今回は犬を触るとき抱き上げるときに犬が安心してくれやすい3つの方法をご紹介しました。
1. まず犬に声かけをしましょう!
2. 犬の「いいよ!」のサインを待ちましょう!
3. 自らの手に注意を払いましょう!
そのほか、犬に安心してもらうために心がけることは、おしゃべりをすることと、広い視野で観ることです。
このような方法を繰り返すと、声かけの段階で犬が「いいよ!」のサインを出してくれるようになることもあります。また、同じ方法を他の人にもやってもらうことで、他の人にも触られたり抱き上げられたりする際の安心度合いもアップしやすくなります。(練習は必要です)
無理やりに触ったり抱き上げたりするのは、犬に不親切なだけでなく、意図せず犬の行動問題を産むこともありますので、選択しないことをお勧めします。
犬の「イヤ!」を尊重すると、犬は安心して「イヤ!」と言えるようになります。それとは逆に「イヤ!」を無視をされると不安が強くなります。自分で事態を解決しようと行動問題に発展する可能性が高まります。
「イヤ!」が通じる環境にいることは安心につながり、その安心はその後のチャレンジにつながりやすくなります。
触られることや、抱き上げられることを苦手にしている犬はいます。学習によることが多いですが、元々苦手になりやすい気質の犬であることもあります。
苦手があることは悪いことではありません。苦手なことを避けてあげられるならそれでいいのですが、それができないことで飼い主と愛犬の生活の質が落ちるのなら、犬に親切な方法でトレーニングをしてください。
すでに問題が大きい場合や難しい場合はご自分でなんとか頑張ろうとせず、必ず家庭犬専門もドッグトレーナーにご相談ください。
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