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【論文紹介】検証!ハーネスは首輪より引っ張るって本当?

今回は、私もよく飼い主の皆さんから相談を受ける、引っ張りにおける首輪とハーネスの違いについての興味深い研究をご紹介します。

ご紹介するのは、2021年9月に国際的な学術誌である『Frontiers in Veterinary Science』に掲載された、オーストラリアのクイーンズランド大学などの研究チーム(Hao-Yu Shih氏ら)による原著論文です。
タイトルは、『Dog Pulling on the Leash: Effects of Restraint by a Neck Collar vs. a Chest Harness(犬のリード引っ張り:首輪とチェストハーネスによる拘束が与える影響)』。https://www.frontiersin.org/journals/veterinary-science/articles/10.3389/fvets.2021.735680/full

「首輪とハーネス、どちらが犬の引っ張りに影響を与えるのか?」という疑問に、科学的な実験でアプローチした非常に面白い内容となっています。

今回は、この論文の要点や実験結果について、スライドを交えながら、分かりやすく紐解いていきたいと思います!それではさっそく見ていきましょう。

英国およびアイルランドのペット犬の飼い主を対象にした調査(Townsend et al., 2021)において82.7%の犬が散歩中に引っ張るというデータがあります。

多くの犬において、リードの引っ張りが見られるということです。日本でこの検証をした場合も似たような結果になるのではないでしょうか。

ハーネスをつけると力いっぱい引っ張るようになると言われているが、真相はいかに・・・。

それを確かめる実験がこちらです。

オーストラリア・クイーンズランド州の動物保護施設(RSPCA QLD)に1週間以上滞在していた52頭の保護犬を対象に実験を行いました。

実験道具:引っ張りの強さを測定する機器・食べ物・おもちゃ・行動記録用カメラ(異なる角度から撮影できるよう2台)

気を散らす刺激(他の人や犬)を排除した空調完備の部屋で実施されました。

犬が届かないところにおやつを置いてから10秒間の引っ張り・行動を記録しました。

上のスライドの絵では実験者が犬の方を向いていますが、犬の行動に影響を与えないよう、実験者は犬に背を向けてその場にしゃがんでいます。

10分の休憩の後、ハーネスと首輪を付け替えて再び同じ実験。

さらに10分づつの休憩を挟んで、おもちゃでも同じ実験をしました。

実験中の「ストレス関連行動」や「コミュニケーション行動」の発現回数も数えました。

ハーネスは首輪に比べ、最大張力・平均張力・引っ張っている時間の割合がすべて有意に高いという結果になりました。巷の噂通り!

※「引っ張り」とするのは体重の1%以上の力が出たときとして、犬の安全を考えて測定しました。

首輪とハーネスの間で、最大張力、平均張力、引っ張り時間の割合に有意な差は認められませんでした。おもちゃはおやつほど強い動機づけにならなかったことや、リード装着時におもちゃで遊ぶ習慣が少なかったことなどが要因として挙げられています。

パンティング、耳を倒す、リップリッキングなどのストレス兆候について、首輪とハーネスの間に有意な差は見られませんでした。ハーネス装着によって引っ張る力が増加しても、犬が強い苦痛や過度のストレス兆候を示したわけではないことが示唆されています。

おやつテストにおいて、犬の正面に犬に背を向けてしゃがんでいる実験者を見る時間の割合は、首輪よりもハーネス装着時の方が長くなりました。(スライドの説明では「実験者を振り返って見る」とありますが、これは誤りです。)

ハーネスは首輪に比べて首への不快感が少なく、引っ張ることによる痛みや圧迫を受けにくいため、犬が諦めずに「人間を見ることで助けを求める」という別の問題解決行動を模索しやすかった可能性や、首輪を着用している場合、首の局所にかかる強い力によって「犬の頭部の動きが制限され、頭を向けて実験者を見にくくなっていた」可能性が考察さえています。

首輪の場合(局所的な圧迫と不快感) 
首輪を装着してリードを引くと、引っ張る力が首の狭い一点に集中します。この局所的な強い圧迫は犬に不快感や痛みをもたらします。そのため、犬にとって「強く引くこと」そのものが一種の「嫌な刺激」として機能し、引っ張り行動を思いとどまらせたり力を弱めさせたりする抑止効果が生じます。

ハーネスの場合(広い面積への力の分散)
ハーネスは、引っ張った際の負荷が胸部や胴体などの広い面積に分散されます。首のような局所的な痛みや圧迫感ないため、犬にとって引っ張る行為が邪魔されず、快適な状態で前進しようとする力をそのまま発揮し続けることができます。
だからこそ、目の前におやつなどの強い目標がある場合は、犬はそれに到達しようとして前進しようとします。ハーネス装着時は身体へのブレーキ(抑止力)が働かないため、犬はためらうことなく体重を乗せて強い力で引き続け、結果として最大張力・平均張力・引っ張り時間のすべてが首輪より大きくなります

ハーネスだと不快感がなく、おやつを手に入れようとする動機も行動も阻害されません。引っ張ってもおやつに届かないという課題に直面した際、犬はその高い動機から「食べ物にアクセスするための別の解決策」を模索しやすくなります。その代替アプローチとして、そばにいる人間へ視線を送って助けを求めるコミュニケーション行動が現れたと考えられています。

ハーネスは引っ張ったとしても不快になることはないため、動機がある場合は首輪装着時より強く引っ張るけれど、コミュニケーションを取る余裕もあるということが今回の実験からわかりました。

いかがでしたでしょうか?

今回は2021年に発表された論文をもとに、首輪とハーネスが犬のリードを引っ張る力や行動にどう影響するのかを解説しました。

今回の検証実験のデータを見ると、食べ物がかかると首輪よりも引っ張りは強くなるもののハーネスの方が犬はより快適でそれゆえ飼い主とのコミュニケーションを選択しやすくなるという結果でした。

この結果を見るとハーネスの方が良い!と思ってしまうかもしれませんが、首輪とハーネスは、時と場合に応じた使い分けが大切です。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、愛犬やその時の状況に合わせたベストな選択をしてたいものです。

トレーナーの意見としては、引っ張りを減らすためには、日々のトレーニング(飼い主側の対応)がものを言います。愛犬に適した犬具を選んで日々の学習でお互いにとって良い方向に進んでいきましょう!

今回の記事が、愛犬との日々のお散歩をより快適に、そして健康的に楽しむためのヒントになれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!



参考・出典元論文:
『犬のリード引っ張り:首輪とチェストハーネスによる拘束が与える影響』
(原題:Dog Pulling on the Leash: Effects of Restraint by a Neck Collar vs. a Chest Harness)
著者:Hao-Yu Shih ほか(2021年公開)
掲載誌:Frontiers in Veterinary Science
URL:https://www.frontiersin.org/journals/veterinary-science/articles/10.3389/fvets.2021.735680/full

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