「それ触っちゃダメ!」
「コラッ、噛まないの!」
愛犬が、靴下やリモコンや家具に興味を示したり咥えたときに、ついつい声を出したり追いかけて注意していませんか?
特に犬が若い時期は好奇心が旺盛で、人間にとっては「大切な物」でも、犬にとっては身の回りのものがすべて、「魅力的なおもちゃ」に見えています。
飼い主さんがしつけだと思ってやっている“注意する”とか“叱る”という接し方が、実は逆効果になっているケースがとても多いのです。
今回は、愛犬の安全を守りつつ、飼い主さんも穏やかに過ごすための「ちょっとした発想の転換」についてお話しします。
1. なぜ「叱る」のが逆効果になるの?
犬が「匂いを嗅ぐ・鼻でつつく・舐める・かじる・咥える・引っ張る・前足で触る」というのは、興味のあるものを確認するためのごく自然な行動です。
しかし、飼い主さんが「〇〇ちゃん、ダメよ!」とか「こっち来なさい!」、「放しなさい!」などと反応すると、犬はこう学習してしまうことがあります。
- 「これを触ると、飼い主さんが僕のことを見てくれるんだな!」→ 追いかけっこ遊び!
- 「僕がこれ見つけたのにまた取られちゃうの?どうしよう!」→ ゴックン!
良かれと思って注意した結果、「飼い主の反応を引き出すための行動」を強めてしまったり、焦った愛犬が誤飲して開腹手術になってしまうという最悪の事故につながる危険性すらあります。
2. 解決策はシンプル!「叱る」のではなく「環境を作る」
では、触ってほしくない物がある時はどうすれば良いのでしょうか?
答えはとてもシンプルです。
「最初から、犬が近づけない・触れない環境を作っておくこと」です。
- サークルやゲートを活用して、犬の行動エリアを物理的に仕切る
- 大切な物は犬が侵入できない部屋に置く
- どうしても犬の行動エリアにあるものはそれ自体を犬が触れられないように囲う
- 床や低いテーブルの上にものを置かない(靴下、リモコン、コード類など)
- カバンやゴミ箱は蓋つき・手の届かない高さへ移動する
これだけでトラブルの9割以上は未然に防ぐことができ、危険な誤飲事故のリスクも一気に減らせます。環境をしっかり作るだけで飼い主さんの労力もグッと減るはずです。
3. 「反応するタイミング」を変えるだけで、おもちゃ好きに!
ここが一番大切なポイントです。
ダメな物を隠すだけでなく、「犬が自分のおもちゃで遊んでいる時」こそ、飼い主さんの出番です!
どうするのかというと、犬が「おもちゃ」で遊んでいる時に「えらいね!」とか「楽しいね!」と声をかけたり、一緒に遊んであげるようにします。
犬は「おもちゃで遊ぶと、飼い主さんが嬉しそうに反応してくれる・一緒に遊べて楽しい!」と学習してくれやすくなります。
結果として、自ら進んでおもちゃを選ぶようになっていきます。
❌:大切なものや触ってほしくないものに興味を持ったり触ったりしているときに反応する
⭕️:犬のために準備したおもちゃに興味を持ったり触ったりしているときに反応する
上の2つの文章、飼い主さんの行動も犬の行動も全く同じです。犬が何に対して行動しているかが違うだけです。
これは飼い主側で環境を整えるという一手間をかけるだけでこの違いを作り出すことができるのです。
もう一つ忘れてはいけない点があります。それは、おもちゃもいろいろと取り揃えてもらいたいのです。好みは犬それぞれ違いますし、日によっても変わるものです。また、犬用のおもちゃであっても犬によっては危険なものもあります。愛犬に初めてのおもちゃを与える際は必ず飼い主さんが見守るようにしましょう。
4. 環境を整える「3つの大きなメリット」
環境管理と適切なタイミングでのリアクションを徹底すると、驚くほどお互いが楽になります。
① 覚えてほしくない「悪い学習」がゼロになる
触れない環境を作っておけば、「触って怒られる」「触って飼い主の反応を伺う」という体験自体が存在しなくなります。
② 愛犬との関係が壊れず、気持ちが穏やかでいられる
むやみに叱る必要がなくなるため、愛犬の覚えてほしくない方向の学習が減るだけでなく、飼い主さん自身もイライラせずに穏やかな気持ちで接することができます。信頼関係もどんどん深まります。
③ 人側の労力が圧倒的に減る
何度も「ダメ!」と追いかけたり、部屋中を注意深く見張ったりする必要がなくなります。しつけの悩みが減り、心に大きなゆとりが生まれます。
まとめ:叱るパワーを「環境づくり」に使おう!
犬が若いうちは放っておくと家の中の全てのものをおもちゃにしてしまいます。しつけだと思って、一生懸命に犬を注意したり叱ったりすることは、飼い主さんの頑張りに報いず、裏目に出てしまうことになりがちです。まずは、犬の行動を変えようとするよりも、「犬を取り巻く環境」を変えるほうがはるかに簡単で効果的だということを覚えておいてください。
- 触られたくないものは、届かない場所へ(環境づくり)
- 安全なおもちゃで遊んでいる時に、反応する
この2つを意識するだけで、愛犬を危険から守り、お互いに笑顔で過ごせる時間が一気に増えますよ。
ここまで読み進めてきて、「え?それでいいの?環境を変えるだけでは触っていけないものを犬は覚えてくれないじゃない?」と疑問が残っている方もいるかと思います。これについては、犬も人も落ち着いている時に、時間を設けて、遊んでいいものと遊べないものを区別できるように繰り返しトレーニングをしていきます。これはこれで必要です。
お家の中の環境を整えるとこのトレーニングも導入しやすくなりますので、今日お話ししたような内容でお困りの方は、まずは環境を見直してみることから始めてくださいね。

